THE SHE

KNIT BOTTOMS

気楽なのに旬のムードも満載、ニットボトムの話。

 あれは確か中学生の頃、教室の片隅で開いた雑誌『オリーブ』にアニエス・ベーのインタビューが載っていた。その時の彼女の着こなしのあまりのかっこよさに目が釘付けになり、その後の授業中も上の空だった(コラ!)ことを今でも鮮明に覚えている。それはアイキャッチーで奇抜なものでも、ハイブランドに身を包んだものでもなかった。アニエスはほぼすっぴんに近いようなナチュラルなヘアメイクで、赤い刺繍の施されたチロリアンブラウスにグレーのスウェットパンツを穿いていた。足元は素足にベージュのモカシンシューズ。そう、おおよそ30年弱という月日を経てなおここまで覚えているほど、衝撃的にかっこよかったのである。なにが衝撃か。それは大人の女性がスウェットパンツをここまでさり気なくお洒落に穿きこなしていること、そしてここ1番という雑誌の撮影にそれを選ぶことの小粋さであった。すぐに真似したけれど、何度トライしても気合の入れ方を間違えた体育祭の運動着か、当時飼っていた柴犬の散歩時の服装にしかならなかったという苦い思い出も……(涙)。それからずっと、リラックスボトムを小粋に穿きこなしたいと思い続けている。今ならやっぱりニットパンツ、ニットスカート、ニットレギンスをさり気なく、かっこよく取り入れたい。それは気楽でいて新鮮、旬の気分を存分に纏えるからだ。

例えば<エクストリーム カシミア>の霜降りグレーパンツ。

脚を柔らかい毛布で丁寧に包んでくれるような着心地のカシミアのグレー”ジョグパン”には、フリルやレースたっぷりのブラウスのような思い切りテイストの異なるガーリーなトップスを合わせて遊ぶ。そのコントラストが強ければ強いほど、おしゃれ度が上がる。

春に仲間入りしたピンクとグリーンの薄手レギンスで色を投入するのもあり。発色とシルエットがキレイなので、トップスにオーバーサイズのスウェットやロンTを着ても単なる部屋着にはならない。スニーカーを合わせても体育祭にはならない。「センスあるカジュアル」がいとも簡単に完成する。

裾切りっぱなしのワイドパンツ(<エクストリーム カシミア>のパンツは裾を自分でチョキチョキと切ることが可能!)は、同素材、同色の半袖カシミアTシャツとセットアップでスタイリングするとシンプルでありながら上品、かつ小粋だ。今ならこの上にトレンチや薄手のスプリングコートを無造作に羽織ってみるのもいい。足元はハイカットスニーカーで、スタイリングのボリュームを下に作るのも良さそうだ。

同じ白ニットボトムでトライするつもりなのが、新入荷したばかりの<babacoのレギンスを取り入れた、全身白のニットレイヤード。

日本ならではの綿密な職人技術を取り入れたリブ編みの半袖ドレス&レギンスのセットアップ、その上から軽やかで涼しいポリエステル混のスリットスカートを重ねるという着こなし。日本人の体型に合わせた美しいシルエット作りで”ほっこり”に転ぶことを回避。ここまでスタイリッシュな白ニットのレイヤードは珍しいかと。足元だけは黒にして引き締めたいと思う。

ちなみに夏のレイヤードに活躍しそうなスリット入りスカートは白、黒の2色展開だ。

スカートを穿くなら今は大概、ロング丈かマキシ丈。<babaco>のダブルレイターのランダムなプリーツスカートは、ゴムウエストのニットボトムなのにぐっとエレガントに着られる稀有な存在。スウェットパンツからは大きく話が逸れるか?と心配になるほどに美しいシルエット。いや、でも、れっきとしたリラックスボトムなのだからすごいと思う。ここはどこかに”ハズし”や”抜け感”を入れたがる癖を封じ、大人しくシンプルにスタイリングしたい。

 

余談として最後に書き連ねたいのは、ニットボトムは気になる下半身の冷えをカバーしてくれるという利点もある。今年は上半身はどんどんと衣が薄くなっても、下半身はしっかりと温めて血の巡りを良くしておけるのもいい。最後のオチが健康ネタでごめんなさい。でも、血流促進は大事です(キッパリ)。

Text & Edit : Kaori Watanabe<FW>