UPCYCLE
透明性重視のサスティナビリティ
<UPCYLCE>の挑戦
サスティナビリティ、それは、今、ファッション産業が避けては通れない課題。前回もTHE SHE的「洋服循環」企画のときに触れたけれど、難しい。アプローチも、手法も実に様々な上に、そもそもファッション自体が贅沢なことで無駄という考え方だってある。0か100かと極端に突き詰めると矛盾だらけになり、先へ進めない。ファッションとリンクさせるのなら、やっぱり根底に楽しさやワクワクする高揚感があってほしい。そして、例えば、ショッピングバッグを紙に変えてはいるけれど、実際、工場で働く人たちの労働環境は劣悪だという本末転倒な事態(だと思っている)も往々にして起こっているのだから、注意が必要。やはり必要な情報をしっかりキャッチして、学んで、自分自身がサスティナビリティに対するどういうアプローチをよしとするか考えることが必要だ。そして、考えて行動に移すことが何より重要だ。
生産過程の透明化を徹底する、L.A.発の<UPCYCLE>
そんな中、紹介されて実際にL.A.の工場へ見学に行ったのがその名も<UPCYCLE(アップサイクル)>というブランド。そこにあったのは潔いまでの透明性と、仕組みの分かりやすさだった。<UPCYCLE>は2018年にリサイクルTシャツをメインにスタート、ニッティング、染色、裁断、縫製のすべてを自国、アメリカで賄う。自社工場から出た端切れや国内から集めたペットボトルを集めて新しい糸に作り変え、それを元にプロダクト。さらにはそのすべての生産を自社工場から8キロ以内の距離で行うことで、二酸化炭素の排出量を抑えている。調べれば調べるほど、(というか、責任と自身を持って生産過程を透明化しているのだが)アップサイクル、リプロダクトにこだわっている。もちろん商品のすべてが100%ペットボトルの再生からできているものではない。「リサイクル ジャージー」「ヘビーフリース」「リサイクル テリー」の3カテゴリーのうち、「ヘビーフリース」だけはまだ自分たちの望む品質とアップサイクルの技術が追いつかず、鋭意研究中という状況。その辺も包み隠さず、正直に提示するあたりにファッションへの愛も、サスティナビリティへの意志も取って見える。
THE SHEは、そんな中からリサイクルもののみをチョイスした。「ヴィンテージ ウォッシュ リンガーTEE」は、60%がリサイクルポリエステル、40%がリサイクルコットンですよ、そしてこの素材は廃棄されたペットボトルとコットンを再利用していますよとしっかり表示されている。どんな素材でどんな風に誰が作ったか。まるで食品表示のように分かりやすい。
今回、初めてアップするこちらの「リサイクル テリークロップ フーディ」も同様に60%のリサイクルポリエステルと40%のリサイクルコットンを使用している。これだけデータ化すると、ややもすれば、ものすごく生真面目に正義感を振りかざしている風に見えてしまい、つまらなく感じてしまうのもまたファッションの怖いところだが、<UPCYCLE>はかわいくて着心地がいい、着ていて楽しいという、これまたファッションの基本もクリアしているから共感できる。ちょっとレトロな風合いの体操服のようなパイピングTシャツも、ショート丈、ドロップショルダーのパーカも単純に「着たい!」と思わせてくれる。
これからはますます、消費という行動で自分の意思を社会に還元していく時代になる。ああ、今回はちょっと堅苦しい感じのマガジンになってしまったかもしれないな。奥歯を噛み締めず、肩肘張らずに言い換えてみるとこんな感じだ。<UPCYCLE>のサスティナビリティとともに、秋のおしゃれを始めてみませんか?「かわいい」や「かっこいい」は気づきであり、きっと今ある社会問題の入り口になり得るはずだから。
Text : Kaori Watanabe<FW>