MY LIFE, MY STORY
「私という物語」vol.2 デザイナー オリビア・チェン
知ってほしいかわいいモノも面白いコトもたくさんあるけれど、その根底にはいつも「人(ヒト)」がある。どんな人がどんな想いで、どんな風に世の中にモノやコトを送り出しているのか。今という時代とどう向き合っているのか、どんな風に自分の人生を豊かにしているのか。そんなことを紹介するコンテンツがこの「私という物語」だ。
第2回目は、NY在住の22歳、2018年にスタートした<ドファネット>のデザイナー、オリヴィア・チェン。リアルな押し花やフルーツ、野菜の輪切りを使ったアクセサリーや、リサイクル素材でつくる花柄や蝶といったボタニカルプリントの洋服を発表している。
実は他のブランドを見るために訪れた、パリの小さなショールームの片隅に<ドファネット>のアクセサリーが置いてあった。それを目にした瞬間、理屈も理由もぶっ飛ばして「かわいい♡」センサーが発令したのを覚えている。オクラやスターフルーツがスライスされて、コーティングされてピアスになっている。可憐な押し花や小さなバラの蕾もある。よく見るとケールの形のネックレスがある。「これ、なに? かわいい!」この単純な、ふふふと笑える驚きと愛着。これこそがオリヴィアの目指すファッションの概念だ。
(上:青い押し花のピアス¥4,700、黄色い小花のピアス¥4,600/ともにTHE SHE)
「4歳の頃からファッションデザイナーになりたいと思っていた記憶があるわ。幼少の頃からアンティークのアクセサリーや洋服が大好きで、収集暦は長いの。18歳から4年間は自分でオンラインのヴィンテージショップを運営していたの。あの、つまり、私ってデザイナーになるまでの道のりが独特なの。デザイナーを志したのはかなり早いけれど、ファッションの学校にも通っていないし、どこかの企業で修行も積んでいない。ね、”いわゆる”がないでしょう。でも、今の時代はそれが強みになることもあると思う。」
(アイボリー色のバンダピアス¥3,900/THE SHE)
「日常に潜む当たり前のことを少し疑って、不思議なものに変える」。これがオリヴィアにとって、決してぶれることのないコンセプトだ。「もの作りの根底に、シュールレアリズムがあるわ。ハッピーとシュール。この2つを上手く融合させたファッションを提案したい。そしてそれは日常に溶け込むものであるべきだから、着心地やつけやすさ、持ちやすさも絶対的に必要。そこにちょっとしたサプライズがあるってことが理想的。<ドファネット>の看板商品になっている、押し花のアクセサリーがいい例だと思う。植物や花を、これまで誰も見たことがないような手法や表現で、ファッションに落とし込みたいとリサーチを重ねに重ねているうちに思いついた表現なの。」
生産過程も極めて個人的なもので、興味深い。
「THE SHEがたくさん買い付けてくれたアクセサリー類は、本当に小さなネットワークで数量限定で作っているの。家族の庭で咲く花を材料にしていたり、実際に自分で植物や野菜を育てて手摘みして加工したり。こんな調子だからもちろん大量生産はできないけれど、ひとつひとつに対する愛着はとても深いわ。洋服のコレクションは拠点のNYと、LAの工場で、家族のように気心が知れた人たちとのコミュニティでもの作りに励んでいるわ。」
(パンジーと茎のピアス¥4,700/THE SHE)
ブランドが始まってまだ2年、若干22歳ながらもNYを中心にたくさんの媒体に取り上げられ、注目度もどんどん上がっている。オリヴィア、これからどんな風に展開していきたいのかを教えて!
「ファッションに関して言うならアンティークの要素をもっともっと自分のコレクションに注入していくこと。それ以外だと、実は食やワインの分野に進出したいと思ってるわ。」
この”二兎追うもの、三兎得る”時代でしょうと言わんばかりの感覚やたくましさが、今、自分の力で表現方法を探し、実際にビジネスにしていく若者そのものだと感じる。そんなオリヴィアが日本という国をとても好きでいてくれるのもとても嬉しい。
「2017年に一度、東京と横浜に行ったことがあるの! 今はこんな状況だけれど、とにかくできるだけ早く、また訪れたい場所。食もカルチャーもファッション、どれも前衛的で刺激的。それなのに人々は皆、優しくて親切。細部に宿る美しさにとても気を使っているところにも感銘を受けたわ。THE SHEを通じて、日本の皆さんに<ドファネット>を好きになってもらえたら嬉しいです。」
Edit&Text : Kaori Watanabe