THE SHE

MY LIFE, MY STORY

「私という物語」Vol.4 デザイナー サマンサ・ジョー・アロンソ

 タイダイ染めの流行が続く中、<NIKE>のスタンダードな白の”スポーツソックス”を後染めしたカラフルな靴下を発表する<sock sammy jo>というブランドを発見した。「ひとつひとつ愛を込めて、自分の手で染めている」というデザイナー、サマンサ・ジョー・アロンソに質問。靴下好きのTHE SHEとしては嬉しい限りだけれど、どうして靴下を選んだの?

 「靴下というアイテムを選んだきっかけは、アメリカ西海岸では有名な貧困地区、ラスベガスのForemaster LaneやロスのSkid Rowのコミュニティにあるの。そこはもちろん、複雑で課題の多い場所だけれど、性別や年齢、境遇を超えて助け合おうとする希望のようなものも確かにある。それに触れた瞬間に、すごく感銘を受けたの。それがなぜ靴下に繋がるかというと、7年前、私自身も「Made With Love」と名付け、路上生活者の支援活動を始めたんです。日持ちのする食料や飲み物、下着などのエッセンシャルアイテムを詰め込んだバッグを配るというものだったんだけど、衛生面、防寒面でも役立つ靴下は、特に喜んでもらえたの。<NIKE>の丈夫で履きやすいソックスを選んでたくさん寄付していて、今思えば、その頃から無意識にコネクトしていたのかもしれないわ」
 2017年、NYに移ったサマンサは偶然にもNIKEの広告の仕事に関わることになる。「そんなわけで個人的にソックスは『希望』を象徴するようなアイテムでした。もちろん、着こなしという意味でも、足元をファッショナブルなものにするちょっとした、でも、とても重要なアイテムとも思っていたわ。他の皆がスニーカーに集中する中で、私はここでも一人だけ、靴下に精力を注いだのよ(笑)。最初は『タイダイ染めの方法』をググって(笑)、DIYを重ねてチームに提案したところ、採用されたの。それ以来、思いの外、この作業に夢中になってしまったわ。大げさではなく、自らで色を選び、試行錯誤を繰り返しながら、手で染めるという作業は、言葉を使うことなく伝えるI LOVE YOUのイメージなんです。NIKEチームからもサポートを受け、個人的に作っているうちにどんどんオーダーが入るようになって、気がついたら独立したブランドになったという感じかな。今ももちろん、始めた頃と同じくらいの愛情を込めて、ひとつひとつ作っているわ。愛情を込める物作りは、まずは自分たちを心身ともに健康に保つことが必要不可欠! だから、無理はせずに、今は女性だけの小さなチームで仕事をしています。サスティナビリティにも配慮した物作りの形が見つかれば、徐々に生産背景を大きくし、ソックス以外のアイテムも染めてみたいなと思っているわ。」
手染めという手法は何度繰り返しても完璧がなく、毎回、個体差が出る。それこそが醍醐味であり、クリエイティブであり、なにより愛おしい。そしてソックスという日々に欠かせない消耗品を選んだことにも心から共感する。サマンサの「I LOVE YOU.」がたくさんの人に届きますように。

Text : Kaori Watanabe