THE SHE

Shinonagumo

大人気の<Shinonagumo>、
THE SHEは黒を選んだ。

 <シノナグモ>の帽子には今の時代に沿う美しさがある。クラシックなのにモダン。装飾品なのに機能的。ハイセンスなのに日常的。品があるのに気負いない。そう、この相対的感覚がひとつの帽子の中に凝縮されているということが、旬の美しさを導き出しているのだと思う。だからモード誌のスタイリストたちがビジュアル作りのキーアイテムとして推すし、ショップでもヒットセールスを飛ばしている。「安くて便利」ばかりがもてはやされる中で、高いファッション性を保ちながら確実に売れる装飾品は、稀有で貴重だ。
 デザイナーの南雲詩乃さんは幼少期に過ごしたドイツの情景をインスピレーション源にしている。その頃に見た素敵な女性は皆、帽子を被っていた。大きなリボンをなびかせて歩いていた姿を今もずっと覚えている。だから理想の女性像を思い浮かべた時、彼女たちはいつも帽子を被っている。被服科で勉強をしたけれど、自分の理想像を完成させるためには帽子が不可欠で作ることにした。そんな背景があるから<シノナグモ>のアイテムには全部、女性の名前がついていて、可愛く愛着がわく。ちなみに南雲さんはいつお会いしてもどこで見つけてきたのと聞きたくなる可愛らしいアンティークのブラウスに帽子を合わせている。それは気負いなく自然唯一無二の装いで、
 THE SHEは春夏コレクションから4つの型を選び、色はあえてどれも黒にした。ロンTにスリップドレス、柄トップスにデニム、半袖ニットにトレパン、足元はスニーカー。そんな「大人のカジュアル」が定番で、残念ながら(?)エレガント方面には進みそうにもない私たちのカジュアルスタイルに<シノナグモ>の黒い帽子というバランスがしっくりくる。THE SHEのセレクトにも、ブランドの魅力である相対的感覚をそのまま取り入れてみた。

 <Shinonagumo>のルックブックはモノクロで情緒的。ルックブックなのにぼやけていたり霞んでいたりするのも面白くて、見た人がそれぞれに裏側にある物語を想像できるものだ。それを載せようかなとも思ったがブランドのインスタでも公表しているので、ここでは冒頭に書いたハイセンスだけど日常的の、日常の部分をピックアップしてみたい。東京で、仕事場を一歩出て、別段にメイクをするわけでもない平日の午前中に、いつも通りすぎる自分たち(今回はKAORIとERINAの師弟コンビ)でサンプルをかぶってみるとこんな感じだ。

左上:夏のベレー帽「Yvette」  軽い、とにかく軽い。一般的な固いフェルト素材のベレーに憧れるものの、顔がくどいからなのか、なり損ねたパリジェンヌのコスプレみたいになってしまい、そっと脱ぐ人生だったけれど、この夏素材のベレーは気軽にかぶれて嬉しい。展示会で見つけた時から早々と購入を決意。<KkCo>×THE SHEのコラボロングTシャツとの相性もよくて嬉しい。

右上:大人のカチューシャ「Elizabet」 サイドから見た立体的なフォルムが美しい。後ろのリボンは極太で長く、ひと結びして後ろでたらすもよし、前に持ってきてリボン結びすれば、ピレーンなボウタイトップスみたいになるのも面白い。「乙女気分急上昇中」のERINAはもうすぐ入荷予定の<ドファネット>のフラワープリントに合わせてフェミニンに。頭のてっぺんではなくおでこの先くらいにつけるのがコツ。ちなみにこれはショートカットにも似合うカチューシャ。

右下:ナイロンハット「Sarah」 本格的なアウトドア仕様のナイロン素材をデイリー使いの帽子に落とし込んだもの。すっぽりと深くかぶれて、夏の日差しをばっちりガードしてくれる。ブランドの特徴である紐リボンは極細で、取り外し可能。ちなみにツバを折り返してフォルムを変えることもできるし、布袋付きで、小さく折りたたんでバッグに入れることも可能。これは便利で夏の必需品になりそう。特に自転車愛用者におすすめ。

左下:ラフィアハット「Isabel」 ラフィア素材から透ける影までもが美しい。夏が待ち遠しくなる、さらりとワンピース1枚で歩きたくなる帽子。ツバ付近の編み地を変えてあり、くるりと外側に一折りできる仕組み。雰囲気がかなり変わるので、洋服に合わせてツバを変えてみるのが楽しそう。ちなみに紐リボンを首元で結んで帽子を脱ぎ、フーディ気分で背中に背負うのもかわいい。縦に小さく3つ折りできるので、持ち歩きも簡単。

 4つともそれぞれに特徴的で顔周りに変化をつけやすく、それでいて定番で使える黒だからまとめ買いしようかと本気で悩んでいる。本格的に帽子が必需品となる初夏前に、いち早く手に入れてほしい逸品だ。

Text : Kaori Watanabe <FW>