THE SHE

MY VINTAGE FOR YOU

THE SHE的「洋服循環」企画、始動!
Vol.1 スタイリスト小川夢乃さん

サスティナビリティ。直訳すると「人間、社会、地球環境の持続可能な発展」を意味する言葉だ。ファッション、繊維業界は、世界で2番目の環境汚染業界とも言われている。ファッションを愛するからこそ、その状況を自覚して、この言葉を単なる流行で終わらせずに、当たり前のことにしていくことは必須だと思っている。

調べれば調べるほどに、サスティナビリティは難しい。個々それぞれの考え方や捉え方で、取り組む姿勢は多岐に渡ると思うからだ。ただでさえ、多様性についても、先陣を切って進むべきファッション界である。誰かの取り組みが自分と違うからといって否定はしたくない。例えばレザー。①本物のレザーを3世代に渡って着続けている人、②これからはリアルレザーを買うつもりはないが、すでに手にしているものは大切に引き続き、着るべきだという人、③今の時代はフェイクファーこそがファッションだという人。サスティナビリティの視点から言うなれば、正解は③だと思われるかもしれないが、フェイクレザーの製造過程で使われる大量の石油だって地球環境を破壊しているとも言える。結局は対価を払い、長持ちするものを少しだけ買って大切に着続けることが正解なのか? でも、今はこんな気分だ!という感性で着たいものだってあるしな。こんな新しいものがある、こんな素晴らしいデザイナーがいる、紹介したい人やもの、ことだってたくさんある。それでもやっぱり、今の世の中を生きる一人の人間として、子供達に未来を手渡す大人として、サスティナビリティは避けては通れない。だから難しい。

0か100ではなく、考え込みすぎてそのままにするのでもなく、今、THE SHEらしくすぐに取り組めることはなにかと考えた。そこでまずスタートするのが、この「洋服循環」企画だ。すでに日本には素晴らしいヴィンテージショップがあるので、同じことをする必要はない。どこかの誰かが着ていた服を循環させることはお任せし、我々はごく身近にいるファッションのプロたちが着ていた服をこのサイトを使って循環させることにする。洋服を託してくれた人たちのチャーミングな人柄や、仕事との向き合い方も紹介する。名付けて「MY VINTAGE FOR YOU」だ。


記念すべき、第一回目の主人公はスタイリストの小川夢乃さん。夢ちゃんは一緒に仕事もするし、プライベートでも長きに渡る友人でもあり、大切な妹分のような存在だ。スタイリストの椎名直子さんに師事後、数多くの女性ファッション雑誌やカタログ、タレントのスタイリングを手がけている。夢ちゃん自身も昔から古着を愛し、ブランドものと古着、アウトドアものを巧みにレイヤードした、アイキャッチーなスタイリングで知られている。表参道、原宿界隈を派手な着こなしでおしゃれなメガネをかけ、ママチャリで爆走している女性がいたら、多分、それは夢ちゃんである(2児の母親です)。日々、リースのためにたくさんのプレスルームを行き来しているからだ。その逞しい感じもまた、魅力なのである。そんな彼女のファッション観について、聞いてみた。


「中学生の頃、古着ブームがあって、下北沢とか吉祥寺によく行ってましたよ。でもまだ買えないから、母や祖母のタンスを漁ってよく着てたな。高校生になって自分でバイトし始めてから、実際に買うようになりましたね。ファッションが大好きで、大学も杉野服飾大学を選んだんです。当時はファッションデザイナーを目指してね、実際にアパレル会社に就職して4年、ニットのデザイナーとして働いた後に、スタイリストのアシスタントになったんです。そこから、身につけるアイテムの幅もものすごく広がったんですよね。定番服のよさも、カジュアルなアイテムの取り入れ方も、意表をつくスタイリングの楽しさも知ったんです。もちろん、今でも古着は大好きですけどね。OTOE、デスペラードリビング、ブラックスミスとかよく通ってるかな。ブランドならマルニ、ステラ マッカートニー、ドリス ヴァン ノッテンあたりが好きです。でもブランドものはそんなにたくさんは買わないかな。私、多分、昔から『それ、どこどこのあれだよね』と言われるのが好きじゃなくて、ブランドがあんまり分からないものを選ぶ傾向がありますね。似合うものがそういうものが多いのかも? 古着を着てるイメージが強いからか、何着てても古着?って聞かれる(笑)。」

夢ちゃんにとってファッションってなに?との問いかけの答えも面白かった。


「自分を作り上げるものかな。そもそも、私、自分が全然好きじゃなくて、コンプレックスだらけなんですよ。例えばね、『はい、横一列に全員、裸で化粧もせずに同じ髪型で並んでください』って言われたとして、そこから誰かが選ばれるとする。そこでは私、絶対に選ばれないと思うんだけど、でも、好きなように自分で着飾って好きなようにお化粧していいですよって言われたら、なんか、もしかしたら選んでもらえるかもって思えるから。あとは、気分が落ち込むと、自分を元気つけるために洋服を買う。だから絶対に、私にとっては今も、これからも必要なもの。」

今回は確かな審美眼で選ばれたヴィンテージコレクションを中心に、いくつかのブランドアイテムも含めて提供してくれた。ECサイトの商品説明も、あえて彼女の語り口調にしてみたので、ぜひ読んでほしい。夢ちゃんの愛用していた洋服が、他の誰かの手に渡って、新しい物語が始まることにワクワクしている。そうか、ファッションにおけるサスティナビリティとは、楽しくて心が躍るものを軸にしよう。今は、そんな風に考えている。

Text : Kaori Watanabe