〈geckou〉
THE SHE meets 〈geckou〉

THE SHEが今、気になるヒト・モノ・コトに焦点を当てて、協業したり、プロジェクトを一緒に進めたりする企画がスタート。
第1回目のお相手は東京千代田区岩本町にアトリエを構える、アレンジメントに特化したフラワーショップ〈geckou(ゲッコウ)〉。実店舗を持たず、オンラインで注文を受けることが主で、時折、季節に合わせたワークショップも開催している。THE SHEが主宰する伊藤祥子さんにお願いしたお題は「ズボラな私たちでもほったらかしで楽しめて、ちょっぴりミステリアスで、インテリアとしても映える花」。まったくもって図々しいオファーに対する、祥子さんの華麗な答えが球根。土いらず、水入らずというその自立心を見習いたい、ごろんと重みのあるまん丸のマジックアマリリス球根から、水耕栽培で葉だけではなく伸びゆく根までもが美しく、可憐な花を咲かせる球根など6〜7種類。部屋のお気に入りの場所へただ置くだけの手軽さを考えて、それぞれが映える花瓶や器も販売します。立春から本格的に春へと向かい始める、今の季節だからこそ楽しめるタイムリーなモノだ。

そしてそのモノを作りだすヒトこそが、今回の主役。制作中の花やドライフラワー、趣味のいいアンティークの家具や雑貨が並ぶ、心地よくもどこかピリッとかっこいいアトリエで、まずは祥子さんが花屋を志したきっかけについて聞いた。

「2000年初頭、なんだか水が合いそうだと思って選んだ留学先のロンドンで、初めて目にしたノッティングヒルのかの有名な花屋「Wild at Heart」の光景です。寝癖のついたブロンドヘアにダウンベストを着た男性が、ストリート気分満点のカジュアルな雰囲気の中、外で花を組んでいました。それが何時間でも見ていられるほど、最高に素敵だったんです。花が好きで花屋になったのではなく、働く姿のかっこよさに憧れて花屋を目指しました。そして花そのものへの愛というより、色を使う仕事のツールとして花を選んだのだと思います」。

一時帰国を挟んで約4年、ロンドンのフラワーデザインコースに通い、花の市場として有名なイーストロンドンはバラマーケット近くの小さな花屋で修行した。
「英語力も充分ではない中での挑戦でした。何度も断られたけれど諦めずに戸を叩き続けた先に、イラン人女性が営む可愛い店に辿り着いたんです。バラマーケットが開かれる日は出店もして、花がナチュラルに生活に溶け込んでいることや気取らない花の魅力を実感する日々でしたね」。
そんなロンドンでの営みを経て、現地で出会った日本人女性のパートナーとともに生け込みの仕事を一緒に始めて〈geckou〉が生まれた。

「2人ともゲッコウ、つまりヤモリが大好きだったこと、ヨーロッパでは幸運の象徴とされていたことが由来。パートナーは今もイギリスを拠点にしているのですが、私が日本に帰国してからは市場のおじさんたちにも覚えてもらいやすい“月光”も組み合わさりました。花は可愛くて綺麗、お花屋さんで働いている人は優しそう。そういうイメージがありますよね(笑)? 私はただかわいいだけじゃなくて、かっこいい花を提案したい。少し彩度が落ちたようなシックな色味も素敵ですよ。例えばくすんだピンクやマスタード寄りのイエローで色の可能性を広げてみたり、ちょっと毒気があるようなアレンジメントに仕上げてみたり。万人受けじゃなくても、こんなアレンジメントもあるんだという新しい提案をしたいんです。」

月水金の週3日、早朝3時15分起床。片道40分、大好きなKPOPを聴きながら車を走らせて市場に向かう。寒さは堪えるけれど「早朝の静寂と美しさを楽しめるのは花屋の特権かもしれない」と祥子さん。
「花の仕入れの時間が1番好き。THE SHEでも然りですが(笑)、やっぱり買い物にワクワクするんでしょうね。オーダーが入ったら注文内容から好みを読み取り、想像力を働かせて制作していく。仕入れは、その出発点。テーマと予算がある中で、花を選び抜くのは楽しいです。送られた人と同じくらい、依頼主にも喜んでもらいたい。いつもそんな気持ちで花を束ねています」。

〈geckou〉の球根たちは、2月7日よりTHE SHE LABOにて販売する。祥子さんがロンドンと東京で育てた「日常に自然と溶け込む、かっこいい花」の一端をぜひ見に来てください。
Text : Kaori Watanabe<FW>


