〈lessico familiare〉
個性際立つスペシャルな1点もの

「その服、どこのですか?」と他の誰かから問われ、そこから会話が始まる洋服や小物のことを「カンバセーション アイテム」と呼ぶ。今回はこの春、THE SHEイチの”話しかけられてしまう”服〈lessico familiare(レシコ・ファミリアーレ)〉を紹介したい。
〈lessico familiare(レシコ・ファミリアーレ)〉は2020年にミラノでスタートしたブランド。教師兼ザイナーでもあるリカルド・スキャブッリとアリス・カーティ、そして職人でタトゥーアーティストのアルベルト・ペッティロの3人が、既存の素材をアップサイクルしてコレクションを作り上げている。元となる素材やアイテム自体は決して突拍子のないものではなく、あくまで身近で親しみやすいもの。それをヴィンテージで探してくるからどこか懐かしさもあり、自分が熱狂的にファッションに陶酔していった90年代後半から2000年初頭のムードを彷彿とさせる。しかし、ただ時代を懐古させるだけのものならばきっと手は伸びないはずで〈レシコ・ファミリアーレ〉はフォルムやディテールをしっかりと2026年に更新しているから、今、ワクワクするのだと思う。
今回、THE SHEに到着したのは一見ジャケットのようなケープ、唯一無二のオーバーサイズを表現したシャツ、そして3枚を横に繋ぎ合わせたスリップドレス。どれも見た目はかなりユニークだが、実際に着てみるとどうだろう。SACHIと2人でワクワクを通り越し、なかば悲鳴をあげながら試着してみた。まずはケープから。
意外にも、際立ったのは絶妙なシルエットの美しさ



一見、普通のジャケットに見えるがこれはれっきとしたケープ。見ての通り、手は出せるけれど袖口はしっかりと閉じられている。もちろん手を出さずにすっぽりとトップスの上から被るだけの着こなしも可能だ。まずはクローゼットから父親の背広を引っ張り出してきたかのようなボリューム感が魅力。さらに、肩パット入りで、今、絶対欲しい、パワーショルダーも手に入る。意外にも2人ともの開口一番の言葉は「形がめちゃくちゃキレイ」であったし、どんなトップスやボトムにも合わせやすい。袖は嘘のようにしっかりと閉じられており、その美しいフォルムを際立たせるかのように細くなっている。春の新感覚すぎる羽織ものとしてレコメンドしたい。さすがに少しだけ出る手を使って名刺は渡せなそうだし、裾から両手を出してパソコンを叩きまくる姿はちょっと奇妙かもしれないので「お仕事服」ではないけれど、我こそは!というオシャレ猛者がいたらぜひオフィスでも。
90’Sムードたっぷりのスリップドレスはレトロなピンクで。




次はおばあちゃんが昔着ていたようなスリップドレス。しかも、完全なる下着のやつが、横に並列して3枚つなぎ合わされている。かなり難易度が高そうに見えるかもしれないが、Tシャツやデニム、シンプルなニットや手持ちのパンツの上に、そしてジャケットの下に重ねるだけでおしゃれが決まる便利なアイテム。真ん中のドレスに体を入れたら、横についているドレスは肩にかけてもいいし、あえて肩から外してもいい。3つのドレスだからそれぞれ肩紐が2つ、2×3で6本。こんなにも肩紐をぶら下げたのは生まれてはじめてかもしれない! という状態になる。
写真上から:向かって左の肩は3肩紐を全部かけており、右は2肩紐で1肩紐を横に落としている。合計5肩紐。
写真上から2つめ:ドレスの構造、肩紐の多さが理解していただけるはず。
写真上から3つめ:シンプルなニットに重ねたとき、あまりにも可愛くて自撮り。異なる2肩紐が分かりやすいはず。写ってないがもう片方も同じなため、合計4肩紐。
写真下:オーバーサイズのジャケットの下に着たため、サイドからレースをたくさん出したくて、真ん中の基本のドレス以外は肩にかけずすべて垂らした。つまり合計2肩紐。(こんなに肩紐について熱く原稿をしたためたのも生まれてはじめてだ。)
丸く立体的に膨らむ袖がとびきりフォトジェニック



端正でハンサムな青いシャツを解体し、袖に布を貼り合わせてアップサイクル。ポケットにハンカチーフがついていたり、袖のボタンがたくさんあったり。青で統一はしているものの、考え抜かれた濃淡の配色がとても楽しい。袖をあえてだらりと長くしたまま着るのも可愛いが、袖口をきゅっと絞ると現れる腕の立体的なボリューム感がたまらなく素敵だ。たくさんの古着の中から相性のいい青を選び抜いて1枚に仕上げてあるため、時には汚れがあったり既存のブランドのマークがついていたりする。それを手縫いでお茶目に刺繍されているところにもまた、愛着が湧く。
どのアイテムももちろん、すべて1点もの。THE SHEに新しい風を吹かせてくれたと感じる新ブランド、日本初上陸の〈レシコ・ファミリアーレ〉にぜひ注目を!
Text : Kaori Watanabe<FW>


