THE SHE

MY LIFE, MY STORY

「私という物語」
Vol.1 「CSAO」アーティスティックディレクター オンディーヌ・サグリオ

THE SHE magazineの新たなコンテンツは、「人」にフォーカスしたい。ぜひ知ってほしいかわいいモノも面白いコトもたくさんあるけれど、その根底にはいつも「人(ヒト)」がある。どんな人がどんな想いで、どんな風に世の中にそれを送り出しているのか。私たちが好きだ!と思う人は今という時代とどう向き合っているのか、どんな風に自分の人生を豊かにしているのか。共感と尊敬の念を込めて、紹介するコンテンツがこの「私という物語」だ。
第一回目の主人公は、パリのブランド「CSAO(サオ)」のアーティスティック ディレクター、オンディーヌ・サグリオ。THE SHEのオープンと共にECサイトで売り出した「サオ」のバッグとクッションはあっという間に売り切れてしまった。再販をぜひ!という声もたくさんいただき、今回はコロナの影響もあって直接アトリエには行けなかったが、パリ⇄東京間でオンディーヌと密にやり取りをして、THE SHEのために新作をたくさん送ってもらった。このタイミングで、オンディーヌの人柄やビジネスについて、もっともっと知ってほしいと思う。

「私はセネガルで生まれ育ちました。今はパリで暮らしているし、4年間、NYで暮らした経験もありますが、やっぱりルーツはセネガルで、特に、強い結びつきを感じています。1995年に、セネガルのクラフトを使って、美しいプロダクトを生み出せるんじゃないかと思い、母と一緒にこの『サオ』を始めました。あ、実はすでに幼少の頃から構想は練ってはいたんですけれどね(笑)。ちょうど5年前、人道支援組織「ASAO」に専念する母から、本格的にこの『サオ』を引き継ぎました。」
それからの「サオ」はオンディーヌが生地を選び、デザインを決め、生産基盤を強固にし、セネガルの女性たちへ刺繍の指示を出す。パリのアトリエでセールスをし、隣接するショップでは接客も担当している。まさに最初から最後まで、すべての過程に彼女自身が関わり、責任を持ってビジネスをしている。私生活では2人の子供の母。私たちがショップを訪れたときは、彼女の10歳の娘が丁寧に品物を包んでくれた。聞けば、学校が長い休みに入ると、娘も一緒にセネガルへ行き、オンディーヌと一緒に暮らし、ビジネスの成り立ちを見て、現地の人々と遊ぶという。


「指示だけして、あとは現地にお任せという名ばかりのディレクターは嫌なので、生活の基盤はパリにありますが、できる限り、現地に足を運んでいます。刺繍をセネガルの女性に任せ、今では『サオ』の看板商品となったクッションを作り始めたのは、2015年。初めは刺繍を担当する女性スタッフは2人でしたが、今では150人ほどに増えました。すごいでしょう? でも、もっともっと増やせればいいな。セネガルは治安が悪く、壮絶なバックグラウンドを持つ女性たちもたくさんいます。私は幼少時に、セネガルの学校に通っていたから、彼女たちの生活をよく知っています。彼女たちに、できる限りの雇用と安定した生活、それによって手に入る自由を提供したい。女性たちだけが集まるアトリエは、皆が安心して集えるフリースペース。子供を連れてきて遊ばせたり、皆でランチを楽しんだりしているの。」
今では、クリスチャン・ルブタン、子供服のボンポワン、パリの有名なセレクトショップ「メルシー」と、コラボレーションも積極的に行っている。看板商品のクッションとバッグに加え、お皿や家具、洋服と徐々にではあるが、着実にアイテムを増やしつつある。オンディーヌにとって、「サオ」の最終目標ってなあに?と聞いてみたら、にっこり笑って即答した。
「続けることよ!! それに尽きます。多くのセネガルの女性たちの力になるために、私は、とにかくこのビジネスをコツコツと続けるわ。それはとても難しいことだけれど、私の人生でやるべきことだから。巨大な工場を持っていて、大量生産を目的にしているブランドなら、きっと刺繍なんて、1分でハイ、できた!という感じよね(笑)。『サオ』はすべてハンドメイドだから、1日に作ることができる数は限られているけれど、ひとつひとつ丁寧に、心を込めて施している。生地の選定も、もちろん自分で責任を持ってやっているわ。サイズや刺繍に微差ながら個体差があるけれど、それでも、ぬくもりがあって、可愛くて、意味のあるアイテムを世に出すことが重要だと思うの。THE SHEから始まって、日本でもたくさんの人が手に取ってくれたら嬉しいわ。」
 今回は、クッションとバッグの新作をパリから前回よりも多めに取り寄せた。バッグはオイルコーティングでより丈夫に加工されたもの、クッションは、オンディーヌがロンドンで買い付けてきたリバティプリントに刺繍を施したものなどが、バリエーション豊富に揃う。CSAOというカテゴリー内にすべてをupしました。オンディーヌの想いとともに、多くの方に届きますように。

Text : Kaori Watanabe(FW) Photo: ©ondine at instagram