THE SHE

MY LIFE, MY STORY

「私という物語」Vol.3
<KkCo>デザイナー カラ・ジュビン(前半)

 THE SHEが尊敬し、共に歩いていきたいと思っているのが、<KkCo(ケーコー)>のカラ・ジュビンだ。2019年の夏、THE SHEの立ち上げを決めて早々にL.A.へ飛んだSACHIから、興奮気味にメールが届いた。それは日本未上陸で、デビューしてすぐだから知名度もないんだけど、これだ!と思うブランドを見つけたよ。早速、会いに行ってきた、という内容だった。相変わらず猪突猛進だわ、好き♡と思いながら、どれどれとホームページを開いたら、ユニークだけど日常にもなじむ、カジュアルだけど芯がある服が揃っていた。誰の真似でもない、独自のカルチャー色が漂うコレクションを見て、私も一瞬で恋に落ちた。そこには、私たちが追求したい「大人の女性のためのストリートウエア」が確実にあったから。さらに、まだHPも完成していない、なんならまだTHE SHEという名前すら決定してない、どこの誰だか分からないけれど、ファッション愛と新しい取り組みへの意志、そしてKkCoへの恋心だけは強すぎるほどに抱いた私たちのために、なんといきなりコラボレーションアイテムを作ってくれることになった。いや…普通(という言葉は嫌いだけれど)じゃ考えられない……。とびきり嬉しいけれど、どういうことなの? SACHIとカラが、一体全体、どんな意気投合の仕方をしたのか、一編集者としてはその場に立ち会いたかったものだと今も思う。

 SACHIとカラがそれ以来、何度も何度も打ち合わせを重ねて作ったコラボアイテムも順調に売れ、今年の1月に発表したつけ襟はなんと1日かからずして完売。今回、3度目の再入荷となる。もちろん、つけ襟のみならず来週発売予定の新作もとびきりに可愛いので楽しみにしていてほしい。<KkCo>への問い合わせもどんどん増える今、今回は、改めて私たちの大切な仲間であるカラについて紹介したい。東京⇄L.A.間でなされているいつものおしゃべりのような感覚で、今週と来週の2回に分け、KkCoの新作コレクションの発売に合わせてお届けします。

(写真:アトリエに作ったスタジオで、自ら撮影も行うKARA)

 

 

THE SHE カラ、今回はTHE SHE magazineを見てくれている日本の皆さんにあなたのことをたくさん知ってもらいたいから、よろしくお願いします! さて、早速だけど、ファッションの道を目指したきっかけを教えてもらえる?

KARA ありがとう、こちらこそよろしく! ファッションは常々、私の一部だと思っている。幼少期、私の母は私の服を手作りしてくれていたのね。洋服ではないけれど、自分でパターンを引くところから始めて、すべて自分で縫い上げたテーブルクロスをダイニングルームに飾っていたことは、今も鮮明に覚えてるわ。それにね、母は雑誌『VOGUE』と『W』を一冊も欠かすことなく買っていたの。家の本棚がそれだけでパンパンになるくらいに収集してたわね(笑)。おかげで自然にファッションに興味を持って、それは私の人生に深く染み入るものになったというわけ。そんなことがきっかけでデザイナーを目指し、NYのThe Institute of Fine Artsでファッションデザインを学んだの。

THE SHE <KkCo>はどういうブランドなのか、コンセプトやテーマを教えて。

KARA 私の日常の周りにあるクリエイティビティを反映することがテーマ。私ね、自分とは全く違う業界で物作りをしている人たちにインスピレーションをもらうことがとても多いし、その物作りを観察することも大好きなの。彼らはどんなことに興味があって、どんな服を着ているのかにも関心があるのね。洋服のみならず、KkCoというクリエイティブなコミュニティを築きたいのはもちろん、彼らのコミュニティの助けにもなりたいと思う。そういう意味で、洋服はユニフォームだと考えているわ。

THE SHE KARAの周りの物作りをしている人たちの他には、どこからインスピレーションを受けてるの? KARA自身はまず、インスピレーションを集めることから洋服づくりを始めているよね?

KARA そうだね、まずはムードボードを作ることからスタートしてるね。インスピレーション源はやっぱり身近なものが多いよ。本、映画、アート、趣味。自分たちが気になるありとあらゆるものをペタペタとボードに貼ってみるの。写真だったり、物体だったり、ヴィンテージの布キレだったり、素材は色々。この作業がとにかく大事で長い時間をかけることもしばしばだけど、一度作り上げたものはもうそれっきりでその先に使うことは一切ない。また最初から作り直すの。

THE SHE 尊敬している人とか、KARA自身が好きなデザイナーは誰?

KARA こういう時ってきっとラフ・シモンズとかフィービー・ファイロみたいな著名な名前が上がってくることが多いと思うんだけど…、私は独自の視点を持ってブランドを維持し続けるデザイナーたちすべてを尊敬しているし、これからもずっとそのつもり。例えば、後ろ盾なく、独立した物作りをしているBrain DeadとかJiwinalaかな。どちらもとびきりにパワフルでユニークなのよ!

THE SHE 独自性といえば、<KkCo>も既存のファッション産業のスケジュールから外れてコレクションを発表することにしたよね。私たちはその決断に共感するし、さすが! と拍手を送ったけれど、どうしてそうしようと思ったの?

KARA ファッション業界というものに身を置いてある程度働いた時に、どうして誰も疑問に思わないんだろうと首を傾げるルールや決まりごとがあって、スケジュールはそのうちのひとつだったの。すべてのブランドが同じ時期に発表することが当たり前に望まれて、その後のセールスもデリバリーもしかり。でも、いつも必ず同じスパンの中で最高のものが出来上がるわけじゃないでしょう? もう一踏ん張り頑張りたいのに、業界の常識とやらで決められたスケジュールがあって、それを最優先しなくちゃいけないのは嫌だなと思ったの。よし、最高のものができた! と自分たちが納得し尽くしたものを満を持して世の中にシェアする、そういうブランドがあってもいいかなと思ってね。それは今の時代に意味のあることだし、実際にやってみたら、チームみんなもすごく健康的にいい物作りができているの。出来上がったタイミングが既存のスケジュールに乗るなら乗るし、まあ、そうじゃないときもある、それくらいのスタンスでいいと思ってる。

THE SHE いいね! 私たちも2人の気分とか気候に合わせてECサイトの商品をアップしているから、やっぱりここでも深く共感するよ。そういう風にビジネスをしていると本当にいろんな学びがあるけれど、KARAが仕事から得た教訓が知りたい!

KARA 臨機応変にやっていこう。緻密に計画したことがすべてうまくいくわけじゃない。だけど、落ち込まないこと! 失敗の中から、得難いひとかけらの美学を見つけることもある。

(後半は来週に続きます)

Text : Kaori Watanabe